必要なメモリ長は?

図3:これらの画像は、2Mポイント・メモリ設定(左)と2kポイント・メモリ設定(右)のオシロスコープで、低速の掃引速度(1ms/div)で捕捉した80MHz方形波を示したものです。2Mポイント・ロングメモリは、エリアジングを防ぐために十分なサンプリング・レートを維持しています。メモリが2kポイントに減少させた場合には、サンプリング・レートは1000分の1に低下します。この低下したサンプリング・レートでは、オシロスコープは信号をアンダーサンプリングするので、155MHzの周波数のエリアジング信号が生じます。右側の波形は正常に見えますが、正常ではありません。波形の周波数が79.9MHzずれています

既にお分かりのように、帯域幅とサンプリング・レートには密接な関係があります。メモリ長もまた、サンプリング・レートと密接に関係しています。A/Dコンバータが入力波形をディジタイズし、その結果のデータはオシロスコープの高速メモリに保存されます。オシロスコープの選定する際の重要な要因に、この保存情報がオシロスコープでどのように使用されるのかについて理解する必要があります。この方法により、データの捕捉、拡大表示、演算、測定、捕捉データに対する後処理などの機能が大きく異なってきます。

オシロスコープの最大サンプリング・レートの仕様がすべてのタイム・ベース設定に適用されると勘違いしている人が多くいます。そのようなオシロスコープは理想的ですが、ユーザの誰も購入できないほどの大容量のメモリが必要になります。メモリ長は限られており、どのようなオシロスコープも、タイム・ベースの設定範囲が広がれば広がるほど、サンプリング速度が低下します。装置のメモリ長が増えれば増えるほど、フル・サンプリング速度で捕捉できる時間は長くなります。現在市場で一般的なオシロスコープには、1秒あたり数ギガ(G)サンプルのサンプリング速度と10,000ポイントのメモリが備わっています。このオシロスコープは、タイム・ベースを2ms/div以下に設定すると、サンプリング速度は強制的にキロサンプル/sのオーダまで遅くなります。サンプリング速度がタイム・ベース設定によってどのような影響を受けるのかを確認するには、オシロスコープを調べる必要があります。ここで言及したオシロスコープは、システム動作のフル・サイクルを表示するために必要な掃引速度で動作している場合には、数キロヘルツ(kHz)の帯域幅しかありません。必要なメモリ長は、維持したいサンプリング・レートだけでなく、表示時間によっても決まります。高いポイント間分解能で長期間にわたり観察する場合は、ロングメモリが必要になります。タイム・スパンとサンプリング・レートが決まれば、次の簡単な式から必要なメモリ長が求められます。

メモリ長=サンプリング・レート×ディスプレイ上の表示時間

波形を拡大表示してさらに詳細に調べる場合は、オシロスコープ上のすべての時間設定で高いサンプリング・レートが必要です。そうすれば、信号のエリアジングを回避できるだけでなく、波形の細部まで詳細に表示できます。

メモリ長が決まれば、最長のロングメモリ設定でオシロスコープ動作を確認することも重要です。従来のロングメモリ・アーキテクチャを採用しているオシロスコープは、応答が遅く、生産性にマイナスの影響を与える可能性があります。応答が遅いので、ロングメモリをスペシャル・モードにするメーカも多く、エンジニアは通常、他に方法がない場合のみ、ロングメモリを使用していました。メーカは長年にわたって、ロングメモリ・アーキテクチャを研究して来ましたが、依然として低速で、動作に時間がかかりすぎるロングメモリもあります。購入する前に、最長のロングメモリ設定でのオシロスコープの応答性を評価する必要もあります。

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