周波数フィルタ

エレクトロニクスの世界のフィルタとは、色々な周波数成分を持つ信号の中から、不要な周波数成分を除去し、必要な周波数成分のみを取り出す回路のことです。ここではフィルタで使われている主な用語と、フィルタの特性と特徴について解説します。

フィルタで使われる主な用語

グラフ
グラフ
■通過域
フィルタで取り出したい信号の周波数帯域
■減衰域
フィルタで除去したい信号周波数帯域
■遮断周波数
通過域と減衰域の境目の周波数 バタワースの場合、通過域から-3dB減衰した点
■中心周波数
バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタの通過域、減衰域の中心の周波数
■選択度(Q)
バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタで通過域、減衰域の幅(BW)を示すパラメタ Q=中心周波数/BW
■遷移域
通過域と減衰域の間の周波数特性が、通過域から減衰域へと変化してゆく途中の状態の周波数域
■減衰度
減衰域での減衰度合い
■減衰傾度
遷移域でのフィルタ特性の傾き
一般的にdB/oct、dB/decという単位で示される
dB/oct:オクターブ(2倍)周波数が変化したときにどれだけ減衰するか dB/dec:ディケード(10倍)周波数が変化したときにどれだけ減衰するか
■次数
次数理想特性を近似する関数の次数
次数が高いほど理想に近い

フィルタの特性と特徴

重視する特性 フィルタの特性
通過域をフラットにすることを重視 バタワース
過渡応答(立ち上がり/立ち下がり特性を最適にする) ベッセル
通過域にリプルを持たせることにより、遮断周波数近辺での減衰傾度を大きくする チェビシェフ
通過域、減衰域ともにリプルを持たせることにより、遷移域をできるだけ狭くする
(減衰傾度が大きい)
連立チェビシェフ
(楕円、エリプティック)

4次ローパスフィルタの例

バタワース
■バタワース
  • 構成しやすく一般的
  • 通過域がフラット(最大平坦特性とも呼ばれる)
  • 減衰傾度が、次数×6dB/oct
【用途】
  • 通過域にフラットネスが必要な場合
  • 設計や構成を簡単にしたい
  • 分離したい信号の周波数帯が比較的離れている場合(10倍程度)
ベッセル
■ベッセル
  • 過渡応答(立ち上がり/立ち下がり)特性を最適化(LPFのみで有効)
  • リンギング、オーバーシュートが最小かつ、立ち上がりが同一の次数のフィルタ中で最速
【用途】
  • 波形に情報がある場合
  • 過渡応答をきれいに整えたい場合
シェビシェフ
■シェビシェフ
  • 通過域にリプル(うねり)を持たせることで、遮断周波数近辺の減衰傾度を大きくした特性
  • 回路構成はバタワースと同程度であるが、設計に手間がかかる
  • 過渡応答でリンギングが大きい
【用途】
  • バタワース程度の回路構成で、減衰傾度を少し大きく取りたい場合
連立チェビシェフ
■連立チェビシェフ
  • 通過域、減衰域ともに、リプル(うねり)を持たせることで、遷移域を最小に出来るように考えられた特性
  • 構成が大きくなると共に設計も高度になる
  • 過渡応答でリンギングが大きい
【用途】
  • できるだけ理想に近いフィルタ特性にしたい場合
  • オーバーサンプリングでないADコンバータのアンチエイリアス

(資料提供:株式会社エヌエフ回路設計ブロック)