静電気を吸収するチップバリスタ
(TDK 技術資料より)
コンデンサとツェナダイオードの特性を併せもつ
静電気放電(ESD:Electro-Static Discharge)による誤動作を防止する対策部品には次のようなものがあります。
- チップコンデンサ
- ツェナダイオード
- チップバリスタ
チップコンデンサは、高周波での低インピーダンス特性によって静電気をグラウンドなどに逃がします。チップバリスタとツェナダイオードは、印加電圧と抵抗値の非線形な特性を利用して静電気をグラウンドなどに逃がします。
写真1にチップバリスタの外観を、図1にチップバリスタの電圧-電流特性を示します。チップバリスタの端子間に定格電圧以上の電圧が加わると、端子間の抵抗値は数~数十Ωに低下します。これはツェナダイオードと同様な特性です。
一方、端子間の電圧が定格電圧以下のときは、端子間の抵抗値は約2MΩ以上の高い値になります。このとき端子間には、数十~数千pFの静電容量があります。このように、チップバリスタはコンデンサとツェナダイオードの特性を併せもっており、図2に示すような等価回路で表すことができます。
図3にチップバリスタの構造を示します。積層タイプのチップコンデンサと同様、内部電極が積層されています。
静電気を逃がすようすを実験で確認する
チップバリスタが静電気を吸収するようすを実験で確認してみました。実験に使った静電気の波形(図4)は、IEC61000-4-2に規定されているものです。波形の立ち上がり時間が1ns以下、ピーク電流が7.5Aのとても鋭い波形です。
IEC61000-4-2は、エネルギ蓄積容量と放電抵抗の組み合わせでさまざまなモデルを規定しています。人体の持つ代表的な容量値は150pF、抵抗値は330Ωです。これを、人体モデル(human body model)と呼んでいます。
50Ωの抵抗に静電気を加えたときの、負荷の両端に生じる電圧波形を図5に示します。図5(b)では、ESDガンから放出された電流がすべて負荷に流れ込むため、ピークで約320Vの電圧が生じています。
図6に示すようにチップバリスタを追加すると、ESDガンからの電流は負荷だけでなくチップバリスタにも流れ込み、静電気パルスは大きく抑圧されます。
静電気の侵入口の近くに実装する
図7に示すように、チップバリスタは静電気が侵入するコネクタの近くに実装します。チップバリスタは、IEC61000-4-2に規定されたレベル以下なら、素子自体が破壊することはありません。しかし、静電気と比較して長い時間過電流が流れるサージ電流を吸収するとショートモードで破壊します。