基板対基板接続用コネクタ ガイド

取材協力:ヒロセ電機株式会社

コネクタとは

—— コネクタとは信号接続をするための部品のことです。

家庭用の家電製品やスマートフォンから人工衛星など、ありとあらゆる電気関連機器の信号接続のために使用されているのがコネクタ。機器に外部からの信号を伝送するためにつなげる電子部品であり、導線を樹脂などのハウジングで絶縁した構造になっているのが一般的です。ただし用途にあわせて設計を細かく変更して開発されることから、数万種類もの種類があると言われています。電線を挿すための部品も挿されるための場所も、どちらもコネクタと呼ばれ、信号接続をするための部品であれば広義にコネクタと言えます。

—— コネクタがあれば施工せずに機器を接続できます。

コネクタがあればはんだ付けや圧着などの施工をしなくても、機器同士を接続できます。通常であれば機器同士の接続や切断には施工が必要で、施工による切断をすればまた接続のための処理が必要となります。しかしコネクタは脱着が簡単で、何度も脱着を繰り返すことも可能です。プリント基板に接続するための基板対基板接続用コネクタも、電気製品同士をつなぐインターフェース用コネクタでも同様で、コネクタがあれば接続・切断のための施工は必要ありません。

基板と基板をつなぐ理由
~ 用途とメリット ~

—— 基板上にもう一枚基板を付けたりするのは何故ですか?

例えば、プリント基板を設計する過程で回路が追加され、追加回路が載りきらないことがあります。また、機能が少しずつ異なる何種類かの製品を1種類の基板で済ませようとした場合、オプションとなる回路部分を別基板にして差し替える方法が考えられます。

こうした場合に基板の上に小さな基板を載せるわけです。その際にソケットで抜き差しできるようにしておけば、製造上も保守の面でも便利です。

ちなみに、機器の内部で基板と基板をコネクタで接続する手法は、バス構造を持つネットワーク機器や計測器などで以前から行われています。シャーシに大型の基板(マザーボード)を置いて電源やバスラインを配置し、各回路を機能別にしてサイズの揃った基板に分けて基板の端(カードエッジ)でコネクタ接続するものです。そうすることでハードウエアには手を加えることなく機能の変更やチャネル数の増減などに柔軟に対応できます<図1>。


図1:カードエッジコネクタによる基板接続

基板と基板の距離が離れていたり間に障害物があったりする場合は、フラットケーブルやフレキシブル基板を介して接続しますが、基板が隣接する場合は直接接続しても良いわけです。

いっぽう、最近では機器の小型化を図るうえで基板間を直接接続する機会が増えています。ケーブル等で基板間を接続するよりも直接つないだ方が小型にできるからです。作業工数などの面でも有利です。この場合は小型化が主眼ですから、基板と基板の距離は狭く、コネクタも小型のものが使われます。

重ねるか立てるか
~ 種類と選択 ~

—— 基板と基板を接続する際、何を基準に選べばよいのでしょうか?

第一は、基板を上下に重ねる(スタック)なのか、片方を立てて使うのかです。これによりコネクタの基本形状が決まります<図2a、b>

一般にはコネクタが向き合うことになりますが、コネクタの下側からピンが貫通するボトムエントリのタイプもあります<図2c>。このタイプは、実装密度の点では他に譲りますが基板間の距離に自由度があることと流せる電流値が比較的大きいことから、発熱部品を別基板とする場合などに使われます。 あとは回路の接続に必要なピン数とピッチ(間隔)、それに基板間の距離が分かれば選定できます。なお、実装時に他のSMD(表面実装部品)と一緒にリフローによるはんだ付けをするのであれば、SMD対応のシリーズから選んでください。


図2:小型基板の接続
(a)二枚重ねの例と使用するコネクタ
(b)基板を直角に接続する例
(c)ボトムエントリーコネクタによる接続

電気的には、電流値、耐圧、絶縁などがチェック項目ですので、回路仕様に適合することを確認してください。1ピン当たりの電流定格が足りなければ複数ピンを並列接続して使えます。反対に微少レベルや高信頼度を要求される回路の場合は接点の材質も要チェックです。信頼性の高いコネクタは接点に「金(Au)」が使われますが、ローコストな製品ではスズメッキなどもあるからです。RoHS対応が求められる場合は、それも確認しておきましょう。

なお、高速のデジタル信号や高周波信号を接続する場合は、別途、基板のパターンを含めて伝送路としての特性インピーダンスやクロストークなどの検討が必要になります。

2個使いの罠
~ 基板設計と実装の注意 ~

—— 基板設計や実装上での注意があれば教えてください。

選択時の問題でもあるのですが、コネクタのピン数が足りないことや、回路上の理由で他の配線と分離して信号を接続したいことがあります。こうした場合に基板上に二組のコネクタを置きたくなりますが、実装における取り付けの誤差が互いに影響し合って嵌合(がんごう:はめあい)不良になりやすいため勧められません<図3>。この場合は、よりピン数の多いコネクタを使用して中間のピンをグランドにする、あるいは片方をフラットケーブルなどのワイヤ接続にするなどの方法を採ってください。やや特殊な例としては予め二組コネクタが組み付けられている製品もあります。


図3:コネクタの二個使いはトラブルの元

はんだ付けでは、ICなどと同様に狭いピン間隔で多数のピンが並ぶため、指定のランドパターンを守ると同時にハンダブリッジを生じさせない配慮が必要です。手付けする場合には、過熱によってハウジングが変形しないように、また嵌合部にフラックスが付着しないように注意してください。

基板対基板のコネクタでは、基板の取り付けも大きなポイントです。まず、基板をコネクタだけで支えるのは上手くありません。コネクタの接点は、電気接続のためのものであって、基板を機械的に支持するためのものではないからです。軽い、あるいは、小さい基板だからと言って基板をコネクタだけで支えると、予期せぬ振動で抜けたりハンダ付け部にクラックを生じて接触不良を起こしたりする危険があります。したがって、基板をネジや金具などで支える機構が必要になります<図 4>。


図4:基板はネジや金具で支える

ノーストレスが高信頼の元
~ 取り付けと挿抜 ~

— 基板の取り外しや交換も楽ですね。

基板の取り付けに際しては、基板間の距離と位置精度に十分注意してください。基板を重ねる場合はスペーサを入れますが、長さが適正値より短いと取り付けによって基板に大きなストレスが加わります。

反対にスペーサが長いと、コネクタが十分に差し込まれず間にすき間があいてしまいます<図5a>。

小型のコネクタでは、有効嵌合長(電極が接触しあえる範囲)は僅かですから、少しのすき間でも接触不良になります<図5b>。そのため、各コネクタにはすき間の許容値が定められています。取り付けに際しては、許容範囲に収まる精度と取り付けが必須です。


図5:基板間距離に注意
(a)すき間の許容値
(b)断面の例と有効嵌合長

片方の基板をシャーシに、他方の基板はパネルに固定するといった場合にも、隙間やストレスを生じないようにしてください。

取り外しの際は、基板に平行に引き抜きます。基板を斜めにして「こじ開け」てはいけません<図6>。 なお、基板対基板用のコネクタはその性格上、挿抜(抜き差し)の回数をそれほど多く設定していません(十数回~最大数百回)。頻繁な抜き差しを想定した使い方をする場合は、別種のコネクタを用います。


図6:基板を「こじ開け」ない



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