ステンレス鋼 ガイド

ステンレス鋼について

私たちの身の回りには多くのステンレス製品があり、身近なところではスプーンやフォークといった食器のほか、シンクなど水周りの製品によく使用されています。

ステンレスの大きな特徴に「錆びにくい」ということがあげられます。ステンレス鋼(Stainless Steel)とは、鉄にクロム(Cr)や、更にニッケル(Ni)を混ぜた合金です。基本的な仕組みは、鉄に添加したクロム(Cr)が空気中の酸素と結合して、合金の表面に薄い酸化皮膜(不動態皮膜)を作り、さびを防ぐというものです。酸化皮膜は、無色透明でとても薄いので目には見えません。酸化皮膜は、傷がついても酸素や水があればすぐに新しく再生され、さびの発生を防ぎます。

ただし、ステンレス鋼は、錆びにくいのであって、決して錆びないわけではありません。使用される環境においては、錆ができる場合があります。 もう一つの特徴として、「磁石につかない」と考えている人も多いと思いますが、磁石につくステンレスもあります。

下記で紹介しているオーステナイト系には磁性がありませんが、マルテンサイト系、フェライト系のものは磁性があるので磁石につきます。

身の回りにあるステンレスが、オーステナイト系ばかりだと、あまり気がつかないことなのかもしれません。

ステンレス鋼には大きく分けて2種類あります。鉄にクロムとニッケルが含まれるものと、鉄にクロムが含まれるものです。それらを代表的なもので分けると、以下の3つに分類できます。

鉄にクロムとニッケルが含まれるもの

オーステナイト系ステンレス(18Cr-8Ni、18%クロム-8%ニッケル)

一般的に耐食性、加工性、溶接性に優れ、靭性に富むことから深く曲げたり、絞ったりする用途にも適しており、低温・高温にも耐えられる性能を備えています。多くの用途に用いられており、家庭から建築、自動車、化学、食品などさまざまな分野で重宝されており、ステンレス鋼の製造量のうち60%以上がオーステナイト系ステンレスだと言われています。
非磁性ですが、冷間加工することによって磁性を帯びます。
よく耳にする18-8ステンレスとは、オーステナイト系ステンレスの事になります。


オーステナイト・フェライト系

オーステナイトとフェライトの両方の金属組織を備えるステンレス鋼です。オーステナイトとフェライトの特徴をあわせ持っており、特性は両者の中間に位置します。
さら海水や腐食に強く強度が高いという優れた特徴も持ち合わせており、海水に接する可能性のある危機や公害防止機器に頻繁に活用される傾向です。

鉄にクロムが含まれるもの

マルテンサイト系ステンレス(13Cr、13%クロム)

一般の鋼と同様に、焼入れにより高強度、高硬度などの優れた機械的特性が得られる性質があります。
他のステンレス鋼と比べるとクロムの含有割合が低いことから、耐食性、溶接性、加工性はオーステナイト系やフェライト系より劣りますが、耐熱性と耐酸化性に優れており、500度の環境下でもそのままの強度を維持することができるとされます。常温で磁性があります。

フェライト系ステンレス(18Cr、18%クロム)

冷間加工で若干硬化しますが、焼入れしても硬化性はありません。
耐食性・耐熱性の面では、マルテンサイト系よりも優れた特性を有します。常温で磁性を有しています。

代表的な用途は厨房用品や建築の内装、自動車の部品、ガスや電気器具の部品として。また、純度の高いフェライト系ステンレス鋼は、耐食性に優れていることから温水機器や化学用途としても活用されています。

 オーステナイト系マルテンサイト系フェライト系
組織 18%クロム-8%ニッケル 13%クロム 18%クロム
JIS規格 SUS304 SUS410 SUS430
熱処理 硬化しない 硬化する 硬化しない
耐蝕性
熱膨張 軟鉄の約1.5倍 軟鉄とほぼ同じ 軟鉄とほぼ同じ
磁性

ステンレス鋼の用途

ステンレス鋼とは次のような用途で活用されます。

建築部品・内装・外装として
ステンレス鋼が広く活用される分野として、建築部品や内外装への使用が代表的です。構造材や配管、蝶番などの建材をはじめ、ドアノブやカーテンレールなどのエクステリア・インテリアに使用されることも。さらに、屋根材や壁面、手すりなど、建築の分野ではいたるところでステンレス鋼が活用されています。

厨房用品
ステンレス鋼は厨房用品でも一般的な素材です。耐食性・耐熱性があることを活かし、シンクやガス・電気器具、炊飯器、電子レンジなどで使用されています。また、食器やカトラリー、鍋など、厨房や食卓で使用する器具においてステンレス鋼は一般的です。

乗り物
強固なステンレス鋼は乗り物にも頻繁に用いられています。身近なところでは自動車の排気系の部材や、自転車のフレームやディスクブレーキとして、さらに鉄道や飛行機、コンテナなど、輸送に関する乗り物でも使用されています。