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IPとは?
IP(International Protection)とは、IEC529、JIS C 0920に基づいて規定された固形異物や水に対する電気機器やキャビネットの異物侵入保護等級の表示です。最近では、スマートフォンやスマートウォッチなどの電子機器は生活の一部となっており、生活の中で使用するために、水や雨などの水分から電子機器を保護するための性能が求められています。スマートフォンに雨水がかかったり、埃がかかったりしただけで故障してしまっては、日常生活の中で安心して電子機器を使用できません。
そのため、異物からの保護効果を設計段階で組み込む必要性がありますが、保護能力を「IP」という等級により図ります。つまりIPとは、IEC529、JIS C 0920に基づく水分や異物から電子機器を保護するための能力のことを指します。
IP保護等級の決まり方
「IP保護等級」の決まり方は、IEC(国際電気基準会議)とJIS(日本工業規格)の両方の規格に基づきます。例としてJISによるIP規格でご説明します。
異物侵入保護等級IPは「第一記号」と「第二記号」で保護能力を表します。記号ごとの説明は後にいたしますが、第一記号は「人体及び固形異物に対する保護」を、第二記号は「水の侵入に対する保護」を示しており、それぞれ数字によってどの程度強力に保護できるか基準が設定されています。ただし、どちらかの性能を示さない場合は、「IP6X」のように「X」を指定することもできます。
以上のように、IP保護等級はIECとJISと両方の規格に基づき、第一記号と第二記号の組み合わせにより異物侵入保護等級IPの能力が定められます。
IP保護等級を定めるための試験方法
IP保護等級を定めるためには、次のような方法で試験が行われます。
【異物侵入保護等級IPの試験】・IP1X:直径50mmの鋼球を使用して機器に侵入しないこと、安全な距離が保たれることを確認
・IP2X:直径12.5mmの鋼球を使用し同上の試験を行う
・IP3X:直径2.5mmの試験棒を使用し同上の試験を行う
・IP4X:直径1.0mmの試験棒を使用し同上の試験を行う
・IP5X:危険な量の塵埃の侵入がないことを確認する
・IP6X:塵埃の侵入がないことを確認する
【水の侵入に対するIP保護等級の試験】
・IPX1:機器に10分間水を滴下する
・IPX2:機器が15度傾いた状態で各方向から2.5分間ずつ散水する
・IPX3:機器に各方向60度から合計10分間の散水をする
・IPX4:機器にあらゆる方向から5分以上の散水をする
・IPX5:機器にあらゆる方向から3分以上の噴流水散水を行う
・IPX6:機器にあらゆる方向から3分以上の強力な噴流水散水を行う
・IPX7:機器を水深1mの水槽に30分間浸水させる
・IPX8:機器使用者とメーカーとの取り決めにより試験方法が決定される
上記のような試験が行われ、基準をクリアした場合のみ防水・防塵性能が認められます。
第一記号説明 ~ 人体及び固形異物に対する保護 ~
人体及び固形異物に対する保護 | ||
第一記号 | 記述 | 保護の程度 |
0 | 無保護 | 特に保護はされていない。 |
1 | 50mmより大きい 固形物に対する保護 |
人体の表面積の大きな部分、例えば足などが誤って内部の充電部や可動部に接触する恐れがない。 直径50mmを超える固形物体が内部に侵入しない。 |
2 | 12mmより大きい 固形物に対する保護 |
指先、又は長さが80mmを超えない指先類似物が内部の充電部や可動部に接触する恐れがない。 直径12mmを超える固形物が内部に侵入しない。 |
3 | 2.5mmより大きい 固形物に対する保護 |
直径又は厚さが2.5mmを超える工具やワイヤなどの固形物体の先端が内部に侵入しない。 |
4 | 1.0mmより大きい 固形物に対する保護 |
直径又は厚さが1.0mmを超える工具やワイヤなどの固形物体の先端が内部に侵入しない。 |
5 | 防塵型 | 粉塵が内部に侵入することを防止する。 若干の粉塵の侵入があっても正常な運転を阻害しない。 |
6 | 防塵型 | 粉塵が内部に侵入しない |
第二記号説明 ~ 水の侵入に対する保護 ~
水の侵入に対する保護 | ||
第二記号 | 記述 | 保護の程度 |
0 | 無保護 | 特に保護はされていない。 |
1 | 滴下する水に対する保護 | 鉛直に落下する水滴によって有害な影響を受けない。 |
2 | 15゜傾斜したとき 落下する水に対する保護 |
正常な取付位置より15゜以内の範囲で傾斜したとき、鉛直に落下する水滴によって有害な影響を受けない。 |
3 | 噴霧水に対する保護 | 鉛直から60゜以内の噴霧水に落下する水によって有害な影響を受けない。 |
4 | 飛沫に対する保護 | いかなる方向からの水の飛沫によっても有害な影響を受けない。 |
5 | 噴流水に対する保護 | いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響を受けない。 |
6 | 波浪に対する保護 | 波浪または、いかなる方向からの水の強い直接噴流によっても有害な影響を受けない。 |
7 | 水中への浸漬に対する保護 | 規定の圧力、時間で水中に浸漬しても有害な影響を受けない。 |
8 | 水没に対する保護 | 製造者によって既定される条件に従って、連続的に水中に置かれる場合にて記する。原則として完全密閉構造である。 |
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