電気二重層キャパシタ ガイド

電気二重層キャパシタの基礎知識

取材協力:ニチコン株式会社

電気二重層キャパシタとは?
大容量コンデンサの定番 ~ 蓄電デバイスの位置づけ ~

—— 電気二重層キャパシタは、コンデンサと違うのですか?

電気二重層キャパシタ(電気二重層コンデンサ, Electric double-layer capacitor : EDLC)は、コンデンサと二次電池の中間に位置する蓄電デバイスです。コンデンサとして捉えた場合の静電容量は、数十F (ファラッド)以上にも達し、一般のコンデンサとは大きくかけ離れています(図1)。しかしながら、電気的な特性面ではまさにコンデンサです。例えば、電気二重層キャパシタは放電に際し、コンデンサと同様に、放電直後から直線的(注:定電流放電の場合)に電圧が低下する特性を示します。これに対して、電池では、一定の電圧を保った後、電圧が低下します(図2)。

図1:静電容量の比較
出典:ニチコン株式会社
図2:放電特性の違い

出典:ニチコン株式会社

一方、一般の二次電池と比較すると、パワー密度(単位体積当たりの出力電力)では勝るものの、エネルギー密度(単位体積当たりに蓄えられる電力量)は電池に及びません(図3)。

図3:パワー密度とエネルギー密度

出典:ニチコン株式会社

このことから、電気二重層キャパシタを瞬発力に優れた小型電池として捉えることもできます。そのうえ、電気二重層キャパシタは急速な充放電や百万回を超える充放電にも耐えるなど、電池にはない特長を持っています(表4)。

表4:各デバイスの得失
電気二重層
キャパシタ
AL電解コンデンサ NI-Cd 電池 リチウム電池
 バックアップ能力 
公害性 Cd 使用
使用温度 -40~85℃ -40~105℃ 0~45℃ -20~60℃
充電時間 数秒 数秒 数時間 数時間
充放電寿命 原理的に無制限 原理的に無制限 300 回程度 800 回程度
充放電の制限
無し 無し 有り
有り

出典:ニチコン株式会社

電気二重層キャパシタの特長

—— それでは電気二重層キャパシタの特長について確認していきましょう。

充放電回数が多くても劣化が少ない

電気二重層キャパシタは、充放電回数が多くても劣化しにくいという特長を持ちます。大きな電流量で数十万から数百万サイクルの充電・放電を行っても耐えられるとされており、性能の劣化が非常に少ないことから長く使用することも可能です。充電・放電を繰り返し行う用途においては、充放電回数により劣化しにくいことが大きなメリットだと感じられるでしょう。


急速な充放電に対応している

急速な充電・放電に対応していることも電気二重層キャパシタの大きな特長です。急速充放電に対応できる理由は、電気二重層キャパシタの出力密度が高いことに端を発します。そのため大きな電流を流しても充電・放電がスムーズに行うことが可能です。


環境にやさしい

電気二重層キャパシタは、環境にやさしい素材から作られています。従来の蓄電池では鉛やカドミウムなど環境に悪影響を及ぼす素材や金属が使用されていたため、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池はその他の蓄電池へと置き換えられてきました。

しかし電気二重層キャパシタには鉛やカドミウムは使われておらず、電力材料としては活性炭が使用されることが一般的。
自然物である活性炭を採用した電気二重層キャパシタは、環境にやさしい蓄電デバイスとして注目を集めています。


幅広い温度範囲で使用できる

使用する温度範囲が幅広いことも電気二重層キャパシタの特長と言えます。使用できる温度範囲は鉛蓄電池と同等程度とされているため、-15℃から45℃までの温度に耐えられるはずです。

ただし、電気二重層キャパシタは使用時に内部で発熱が起こるうえに、周囲の温度が高くなるほど寿命が短くなると言われます。
寿命の長さを期待すると使用温度範囲は低めが理想ですが、低温・高温の場所でも使用に耐えうる温度範囲の幅広さを備える蓄電デバイスです。


完全放電することができる

電気二重層キャパシタは、完全放電が可能です。その他の二次電池は溜めこんだ電力を完全に放出することができませんが、電気二重層キャパシタは充電したエネルギーの残量が0Vになるまで放電できるためより多くのエネルギーを取り出せます。内部に残るエネルギー残量により電圧の変動は起こるものの、完全放電できることは電気二重層キャパシタの大きな特長です。

そもそも電気二重層って何?
~ 電気二重層キャパシタの原理と応用製品 ~

—— コンデンサとは、仕組みが違うのですか?

電気二重層キャパシタは、電気二重層を誘電体とした、対面電極のコンデンサ構造をしています。 電気二重層は、固体と液体との間で自発的に生じ、充電によって、電子またはホールが互いに引き合って整列している状態を言います(図5)。図で分かるとおり、両方の電極表面に形成されますが、等価的に電極間の距離が、ナノメートルオーダと極めて近いので、大容量を実現できます。他方、距離が近いことから、大きな耐圧を得ることが難しいという面もあります。また、電気二重層キャパシタの充電と放電は、イオンの移動によるものであり、電池と異なり化学反応を伴わないので、充放電により劣化が少なく長寿命であるとともに、内部抵抗(コンデンサで言う等価直列抵抗:ESR)が小さく、良好な充放電特性が得られる特長を持ちます。

図5:電気二重層キャパシタの原理構造

出典:ニチコン株式会社


実際の電気二重層キャパシタは、電解コンデンサと同じようにコンデンサ箔を円筒状に巻き取った捲回タイプと、層を重ねた積層タイプ(コイン型)のものがあります。また、複数の電気二重層キャパシタを並列又は直列接続することで蓄電容量を大きくしたモジュール製品もあります(図6)。


図6:製品例

出典:ニチコン株式会社

蓄電と電源アシスト
~ 電気二重層キャパシタのアプリケーション ~

—— 電気二重層キャパシタは、どんなところに使うのでしょうか?

電気二重層キャパシタは、コンデンサと電池の中間に位置する蓄電デバイスですので、蓄電機能を利用するアプリケーションがまず考えられます。例えば、家電品などの待機電力源、瞬時停電や電源電圧低下などのバックアップ電源、非常灯などの局所電源です。

次に、優れた充放電特性を利用する用途として、変動が大きな充放電システムに対するアシストが挙げられます。具体的には、太陽光や風力発電システムなどにおいて、発電時に電気二重層キャパシタに蓄えた電力を急負荷時に放出することで負荷変動を平準化し、システムの耐力を増すロードレベリング用途があります。EVやHEVなどの自動車用途では、これに加えて、電力回生時のレベリングといったアシスト効果も期待できます(図7)。

図7:電気二重層キャパシタ(EDLC)のアプリケーション
出典:ニチコン株式会社


電気二重層キャパシタの用途

—— 電気二重層キャパシタの用途について、より具体的に見ていきましょう。

再生可能エネルギー発電所

電気二重層キャパシタは、再生可能エネルギー発電所でバッファとして活用されています。発電所などの大型施設では大型リチウムイオン電池が用いられているため、電気二重層キャパシタの蓄電容量では発電所での使用に耐えることができません。

しかし、リチウムイオン電池に流れ込む電流量を一定にするためには、電気二重層キャパシタにバッファの役割を持たせて介することが理想です。そのため風力発電所・太陽光発電所などの再生可能エネルギー発電所では、バッファとして電気二重層キャパシタが使用されています。


新幹線などの鉄道車両

電気二重層キャパシタは、新幹線などの鉄道車両でエネルギー回生を目的として活用されています。たとえば、加速の際に使用したエネルギーをブレーキにより回収する、クレーンの巻き上げで使用したエネルギーを巻き下げの際に回収する…など、使用したエネルギーを回生して再び蓄電することで燃費を向上させるために使用されているのです。

以上のように鉄道車両においては、エネルギー効率を高めるためにエネルギー回生の目的で電気二重層キャパシタが使用されています。


医療・工場などに設置される精密機器

精密機器を設置する医療の現場や工場でも、電気二重層キャパシタが欠かせません。精密機器は落雷や台風などで停電や瞬間的な電圧低下が起きた場合、動作が不安定になったり、故障してしまったりすることもあるでしょう。

しかし、電気二重層キャパシタを精密機器に搭載することにより、停電・電圧低下時に蓄電した電力で動作を続けることができるようになります。万が一の際に電気二重層キャパシタが蓄積した電力が使えれば、安全に機器を終了させたり、自家発電装置へと切り替えたりする時間的な余裕が生まれるはずです。

そのため、医療分野や工場などの精密機器には、万が一に備えて電気二重層キャパシタが搭載されています。


スマートフォンや携帯電話

電気二重層キャパシタは産業用だけではなく、スマートフォンや携帯電話など身近な電気機器にも使用されます。スマートフォンや携帯電話での用途は、主にメモリのバックアップ用の電源や時計の作動用として、です。

また、アプリやシステムの起動など大きな負荷がかかる動作の際には、電気二重層キャパシタが電力源として本体電源のパワー不足を補っています。電気二重層キャパシタは産業分野で広く利用されているだけでなく、私たちにとって身近な機器であるスマートフォンや携帯電話にも組み込まれているのです。

充電と放電
~ 電気二重層キャパシタの仕様の決定と品種の選択 ~

—— 電気二重層キャパシタを使用する際の設計上の留意点は?

設計は、電気二重層キャパシタをコンデンサとして考え、システムに必要なエネルギー量から電気二重層キャパシタの総容量を決めることからスタートします。

実際にはまず、必要な電圧 [V] と電流 [A] から電力 [W→J/s]、さらに持続時間 [s または h] から必要なエネルギー量Ja [J] を求めます。一方、容量C [F] のコンデンサに蓄えられるエネルギーは 1/2×C×V^2  [J] ですので、放電開始時の電圧をV1、放電終了時の電圧をV2とすれば、供給エネルギーJb [J] は図8の式で与えられ、Ja=Jbとすることでコンデンサの容量を決めることができます。

図8:静電容量とエネルギーの関係

必要なエネルギー量 [Ja] = 電圧 x 電流 x 持続時間

電気二重層キャパシタのエネルギー量 [Jb] = 1/2C (V12 - V22)


次に、電気二重層キャパシタ製品の電圧と容量定格を参照しながら、総容量をいくつのコンデンサで構成するかを決めます(直並列数の決定)。その場合、アプリケーションが短時間充放電のW重視か、長時間放電のWh重視かで、最適な品種が異なることもあるので、選択肢を多くしておくのがコツです。

その後、回路設計に入るわけですが、基本的には大容量のコンデンサとして動作する回路になります。図9に、電気二重層キャパシタの充放電特性の一例を示しました。回路設計に際しては、電気二重層キャパシタの抵抗成分にも注目してください。その際、直流に対しては直流内部抵抗(DCR)が主眼となりますが、短期間に充放電が繰り返されるものや、電気二重層キャパシタにリップル電流が流れる回路では、当該周波数に於ける等価直列抵抗(ESR)にも注目します。なお、DCRやESRは温度等で変動するパラメータであることに留意してください。


図9:放電特性とパラメータ例

出典:ニチコン株式会社


他には、有寿命部品であることを認識した設計が必要なこと、温度上昇に対する配慮が必要なこと、直列あるいは並列に使用する場合は各コンデンサに電圧や電流が偏りが生じないようにするなど、電解コンデンサと類似する部分が多くあります。何れも、メーカーから開示されている注意事項と照らし合わせ、安全で安定した動作を実現する設計および実装を心がけてください。


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