パッシブフィルタ ガイド

周波数フィルタの基礎知識

資料提供:株式会社エヌエフ回路設計ブロック

周波数フィルタとは?

エレクトロニクスの世界の “フィルタ” とは、色々な周波数成分を持つ信号の中から、不要な周波数成分を除去し、必要な周波数成分のみを取り出す回路のことです。

周波数の成分を持つ信号の中には、さまざまな周波数が含まれるため、ノイズや欠陥のある周波数が混じることもあります。周波数フィルタはノイズや欠陥のある周波数を除去し、周波数をクリアな状態にするために必要です。

周波数フィルタには主に次のような種類があり、それぞれ抽出・除去する周波数が異なります。

【周波数フィルタの種類】

・ローパスフィルタ:遮断周波数より低周波数だけを通すフィルタ
・ハイパスフィルタ:遮断周波数より高周波数だけを通すフィルタ
・バンドパスフィルタ:通過域として設定した周波数帯だけを通すフィルタ
・バンドエリミネーションフィルタ:中心周波数に近い周波数帯だけを除去するフィルタ

周波数フィルタはいずれも周波数の不要な成分を除去する役割を担いますが、周波数フィルタの種類により抽出・除去される周波数は異なるため、目的にあわせて使い分けることが大切です。

ここでは周波数フィルタで使われている主な用語と、周波数フィルタの特性と特徴について解説します。

周波数フィルタで使われる主な用語

通過域 周波数フィルタで取り出したい信号の周波数帯域






出典:
株式会社エヌエフ回路設計ブロック
減衰域 周波数フィルタで除去したい信号周波数帯域
中心周波数 バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタの通過域、減衰域の中心の周波数
選択度
(Q)
バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタで通過域、減衰域の幅(BW)を示すパラメータ Q=中心周波数/BW
遷移域 通過域と減衰域の間の周波数特性が、通過域から減衰域へと変化してゆく途中の状態の周波数域
減衰度 減衰域での減衰度合い
減衰傾度 遷移域での周波数フィルタ特性の傾き
一般的にdB/oct、dB/decという単位で示される
dB/oct:オクターブ(2倍)周波数が変化したときにどれだけ減衰するか dB/dec:ディケード(10倍)周波数が変化したときにどれだけ減衰するか
次数 次数理想特性を近似する関数の次数
次数が高いほど理想に近い

フィルタの特性と特徴

重視する特性フィルタの特性
通過域をフラットにすることを重視 バタワース
過渡応答(立ち上がり/立ち下がり特性を最適にする) ベッセル
通過域にリプルを持たせることにより、遮断周波数近辺での減衰傾度を大きくする チェビシェフ
通過域、減衰域ともにリプルを持たせることにより、遷移域をできるだけ狭くする
(減衰傾度が大きい)
連立チェビシェフ
(楕円、エリプティック)

4次ローパスフィルタの例

バタワース


  • 構成しやすく一般的
  • 通過域がフラット(最大平坦特性とも呼ばれる)
  • 減衰傾度が、次数×6dB/oct

【用途】
  • 通過域にフラットネスが必要な場合
  • 設計や構成を簡単にしたい
  • 分離したい信号の周波数帯が比較的離れている場合(10倍程度)
ベッセル

  • 過渡応答(立ち上がり/立ち下がり)特性を最適化(LPFのみで有効)
  • リンギング、オーバーシュートが最小かつ、立ち上がりが同一の次数のフィルタ中で最速

【用途】

  • 波形に情報がある場合
  • 過渡応答をきれいに整えたい場合
シェビシェフ

  • 通過域にリプル(うねり)を持たせることで、遮断周波数近辺の減衰傾度を大きくした特性
  • 回路構成はバタワースと同程度であるが、設計に手間がかかる
  • 過渡応答でリンギングが大きい

【用途】

  • バタワース程度の回路構成で、減衰傾度を少し大きく取りたい場合
連立チェビシェフ


  • 通過域、減衰域ともに、リプル(うねり)を持たせることで、遷移域を最小に出来るように考えられた特性
  • 構成が大きくなると共に設計も高度になる
  • 過渡応答でリンギングが大きい
【用途】
  • できるだけ理想に近いフィルタ特性にしたい場合
  • オーバーサンプリングでないADコンバータのアンチエイリアス

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