電源 ガイド

電源回路の基礎知識

電源の種類

電源には、交流から安定した交流を供給するもの、交流から安定した直流を供給するもの、直流から安定した交流を供給するもの、直流から安定した直流を供給するものがあります。

この中で、最も用いることの多い「交流から安定した直流を供給する」ための電源に、リニアレギュレータとスイッチングレギュレータがあります。

リニアレギュレータとは?

リニアレギュレータは、入力電圧をトランジスタやIC(3端子レギュレータ)などによって一定の電圧を得るものです。電圧を落とすということからドロッパとも呼ばれることもあります。リニアレギュレータには、シリーズレギュレータとシャントレギュレータがあります。

シリーズレギュレータは、入力と出力の間に直列に制御回路を入れる方式であり、シャント・レギュレータは、負荷と並列に制御回路を入れる方式です。
図1(a)、(b)にそれぞれの原理図を示します。

図1:リニアレギュレータの回路動作

スイッチングレギュレータとは?

スイッチングレギュレータは、回路のON、OFFの繰り返しによって入力電圧を低電圧に変換するものです。
スイッチングレギュレータのグループには、入力電流の全部または一部が負荷側に流れる非絶縁型のチョッパと、入力側と出力側では電流ループが別個であるコンバータに分かれます。現在使用されている「交流から安定した直流を供給する」ための電源のほとんどが、このコンバータ方式です。
スイッチングレギュレータは、先のリニアレギュレータと比較した場合、ノイズを発生しやすいなどのデメリットがありますが、軽量、コンパクトな設計が可能であるため急速に普及しました。
図2(a)、(b)にコンバータ方式の代表的な原理図を示します。

図2:スイッチングレギュレータの回路動作(電流ループ)

電気の作られ方

電源回路が動く源となる電気は、一体どのように作られるのでしょうか。電気の作り方についての基本的な知識について解説します。


電気は機械エネルギーにより作られる

電気は機械のエネルギーから作られます。電気は一般的に発電所で作られていますが、機械が回転する際に生じるエネルギーを電気へと変換することにより作られるのです。磁界において導体が移動すると電磁誘導現象により導体に電流が生じる仕組みを活用して作り出します。
たとえば、電線を設置した隣で磁石を回転させると、N極とS極が電線の設置された部分を通過する際に電線に電流が生じます。N極とS極で生じる電気の流れは反対となるため、磁石を回転させ続けN極・S極・N極…と複数回にわたり電流を生じさせると、交流電気が蓄電されていく仕組みです。
以上のように、電気は機械が回転する際に生じるエネルギーにより生み出されています。


再生可能エネルギーの作られ方

再生可能エネルギーの作られ方も、その他の電気と同様に機械の回転により作られます。
たとえば、風力発電であれば風により風車を回転させることでエネルギーを生み出し、地熱発電であれば地中のマグマから生じる地熱でタービンを回転させてエネルギーを生み出します。再生可能エネルギーはその他の電気と作られ方は同じですが、自然の力により機械を回転させることが最大の違いです。
再生可能エネルギーもその他の電気も、機械の回転により作られることに変わりはありません。

交流電源と直流電源の違い

電源には交流電源と直流電源の2種類がありますが、それぞれの違いについても見ていきましょう。


電気の流れの違い

交流電源と直流電源の基本的な違いは、電気の流れ方です。直流電源は一定の方向に真っ直ぐに流れる電気のことであり、交流電源は電流の向きが周期的に入れ替わるため電気が流れる方向や電圧の高さも随時変わります。
交流電源と直流電源にはさまざまな違いがありますが、基本的な違いは電気の流れ方という性質です。


使用される分野の違い

交流電源と直流電源では使用される分野が違います。商用電源では電力の大きさを問わず利用できる交流電源が用いられており、産業機器や民生機器、電気鉄道、家庭内コンセントで使用される家電製品などで用いられる電子回路では直流電源が活用されるのが一般的です。電子制御が必要な回路が搭載されている複雑な機器においては、直流電源の方が適しているため分野により使い分けられています。


電力損失の違い

発電所で作られる電力は交流電気であることから、電力損失量にも違いが現れます。
たとえば、発電所で作られた交流電気をコンセントを通じ家電製品で使用する場合には、交流電気から直流電気へと変換して、直流対応の家電製品で使用できるようにしなければなりません。
しかし、交流電気から直流電気へと変換する際には電力の損失が起こります。
交流電気を使用する交流電源であれば、直流電気への変換は不要となり電力の損失は生じなくなります。
ただし、電気鉄道の電源のように直流送電であれば、直流電源を用いても電力の損失はありません。
現時点では発電所からの直流送電は普及していないため、直流電源では電力変換の際に電力損失が起こりやすくなることが違いのひとつです。


蓄電できるか否か

直流電源では蓄電が可能ですが、交流電源では蓄電ができないことも大きな違いです。
電池・バッテリー・コンデンサなどに交流電源を流しても蓄電はされないため、溜められる電気はすべて直流となります。
そのため電池で稼働する電気機器はすべて直流での稼働に対応しています。

電源の用語

電源についてよく使用される用語の解説をします。

入力電圧
電源の各仕様を満足できる入力電圧の範囲を示します。交流入力の場合は実行値で、直流入力の場合は瞬時値を含めて表わします。従って、直流入力でリップル分を含んでいる場合、その最大値と最小値を考慮する必要があります。
入力電流

 図3  入力電流

電源に流れ込む電流で、実行値で示します。シリーズ方式、スイッチング方式共にコンデンサインプットの整流回路を内蔵しているため、入力電流は正弦波とはならず、図3のような波形になります。

効率

出力電力と入力有効電力の比で表わします。仕様値は、定格出力電力時の値ですので、出力電流が小さい時は効率は悪くなります。

効率 =(出力電力 / 入力有効電力)✖ 100%
突入電流

  図4 突入電流 

電源に入力電圧をかけた瞬間に流れる電流の波高値をいいます。

入力電流の項で述べた通り、AC-DCスイッチング電源の場合、入力電圧を直接コンデンサインプット整流するため、通常の数十から数百倍の大電流が流れます。
そのため、突入防止回路をつけて突入電流を抑制しています。図4に代表的な突入防止回路を示します。

定格出力電圧 出力端子間に現れる直流電圧の公称値を言います。
定格出力電流 電源から負荷に連続して供給できる電流を言います。周囲温度、冷却方法により変わる場合があり、ディレーティング特性を参照する必要があります。
ピーク出力電流 電源から負荷に短時間に流せる電流を言います。モーターなど起動時にピーク電流の流れる負荷に最適です。
静的入力変動
(ラインレギュレーション)
入力電圧を仕様範囲内で変化させた時の出力電圧の変動の最大値を言います。
静的負荷変動
(ロードレギュレーション)
出力電流を仕様範囲内で変化させた時の出力電圧の変動の最大値を言います。
リップル
 図5

出力電圧に重畳される入力周波数と同期したAC成分を言い、Peak-Peakで表わします。電源内部の入力平滑コンデンサにより決まります。(図5参照)
リップルノイズ 出力電圧に重畳されるスイッチング周波数と同期したAC成分をノイズと言います。
このノイズと先のリップルを加えたものをリップルノイズと言い、Peak-Peakで表わします。シリーズ電源では、スイッチング動作がないため、ノイズは発生せず、リップルとリップルノイズは等しくなります。(図5参照)
過電流保護
(Over Current Protection)
 図6

出力電流が規定値以上流れないための保護する方法を言います。短絡保護も兼ねています。
自動復帰とは、過電流の状態が解除された場合、出力電圧が元の状態に戻る機能を言います。過電流保護には、一定の電流を流し続ける垂下特性と電流、電圧ともに減少する「フ」の字特性があります。(図6参照)

過電圧保護
(Over Voltage Protection)
電源内部の異常により、出力に規定値以上の電圧が発生しないよう保護する機能です。

電源 Q&A

Q. 直流電源プラグ及びソケットで従来の2.1mm/2.5mm/1.3mmと、EIAJ規格準拠品に互換性はありますか?

A. 互換性はありません。それぞれのサイズまたは電圧区分(EIAJ規格準拠品)の同じ物をお選びください。

Q. 電源プラグでヒューズ機能付きというものがありますが、ヒューズは付いているのでしょうか?

A. ヒューズは別売です。RS取り扱いの電源プラグでは、全て5x20mmの管ヒューズの装着になります。

Q. DCプラグを探しており、形状はL型です。寸法を測ったら外形φ4、内径1.7です。取扱いはありますか?

A.形状から判断すると、EIAJの電圧区分2に相当すると思われます。RSではEIAJ、および、EIAJ以外の規格プラグがございます。サイズによってオスメスの形状が異なりますので、選定の際はご注意ください。

Q. IEC規格とは何ですか?

A. IEC(International Electrotechnical Commission)は日本語で国際電気標準会議です。世界各国の代表者による電気・電子技術分野の国際規格を作成している機関で、ここで作られた規格が「IEC規格」です。英国ならBS、独ならVDE、他の北欧では代表的な国ではスウェーデンはSEMKO、デンマークはDEMKO、ノルウェーはNEMKO、フィンランドはFIなどがあります。

 

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